集合論1 集合の定義
集合は数学の基礎となるもので、集合の上に色々な構造を積み重ねて理論が形成されます。だいぶ抽象的なので飲み込むまでに時間がかかるかもしれませんが、ゆっくりじっくりと読んで欲しいと思います。副読本としていくつか集合論の本を手元に置いておくといいと思います。また、この記事の使用テキストは、松坂和夫さんの「集合・位相入門」(1968)です。
まずは集合の定義からです。定義にはアンダーラインを引いておきます。
集合とは,‘もの’の集まりであり,どんな‘もの’をとってきても,その‘もの’が集まりの中にあるかないかがはっきりと定まっているようなもののことである.
最後の、「もののこと」の「もの」は「‘’」がついていないので、注意してください。
どういうことかというと、例えば、十分に大きい自然数の集まりを考えると、自然数100が‘十分に大きい’自然数かどうかは人や場合によって変わることがあるでしょう。また、大きな自然数といえばメルセンヌ素数が有名です。2019年11月現在で一番大きいメルセンヌ素数は、2018年12月に発見された51番目もので2^{82589933}-1です。これは、十進数で表したときの桁数は2486万2048桁だそうです。
これは‘十分に大きい’自然数といえるでしょうか。われわれからすればこの数は大きすぎるが、じつはこれよりもっと大きな意味のある数が存在し、グラハム数というものがあります。この数は、数学の証明に使われた最も大きな数としてギネスブックに登録されました。この数は大きすぎて指数で表すことは事実上不可能であるため違った表記法が用いられます。ここではその話はしませんが、気になる人は調べてみてください。
言いたかったことは、われわれが大きな数と認識しているメルセンヌ素数よりも遥かに大きな数があるということで、メルセンヌ素数が‘十分に大きい’と認識する人としない人がいそうだ、ということです。
こういったことがあるため、十分に大きい自然数の集まりは集合とはみなしません。
ではどういった集まりが集合になるのかは次回説明します。
~おまけ~
先ほどした集合の定義は、実は数学的には不完全です。その説明をするのはやめておきます。気になる人は「公理的集合論」をキーワードに調べてみてください。